（１）達弥西心のわかりやすい話「決断」

話の筋書きは、親鸞さんがまだ幼少のころ、預けられていた寺で、ある日突然、出家すると師にあたる僧に告げるわけです。

師匠僧は一瞬驚いたものの、「おおそうか」ということで、「じゃあ今夜はもう夜も遅いから得度の儀式は明日にしよう」と言うと、幼い親鸞さんがおもむろに詠うわけです。

『明日ありとおもうこころのあだ桜　夜半に嵐の吹かぬものかは』

私には、その時から、この『明日ありとおもうこころのあだ桜　夜半に嵐の吹かぬものかは』という歌が心から消えないのです。

『明日ありとおもうこころのあだ桜　夜半に嵐の吹かぬものかは』

（この美しい見事な桜、明日も眺められると思っていても、夜中に嵐が吹いてきて散ってしまうかも知れない）

私がたぶん小学校に入ったばかりの頃だっと思いますが、母親から買ってもらった「親鸞」という絵本の中に出ていた歌です。見事な桜の木の絵が描いてあったのが今でも強く印象に残っています。

奇跡とは、そんなものなのです。お天道様は、あなたのその実際の決意や覚悟を、じっと腕組みして見ておられるのです。じっと腕組みして見ておられて、ここ一番というときに、その腕組みしていた両の手をほどいて、おもむろにそっと差し出してくださるのです。これが、奇跡なのです。

この奇跡は、百段の階段を上るという、宇宙の法則に則っているからこそ、起こりうるのです。そしてこの奇跡は、実際に百段の階段を上り始めたからこそ、起こったのです。

奇跡は、この百段の階段を上っているあなたの上にしか起こりません。つまり、百段を上りきる決意と覚悟をして、実際に上り始めて、半ばまでやってきたときに、突然うえから、一気に引き上げてくれる、いわばエスカレーターのようなエネルギーに出会うことができるのです。それを奇跡と呼びます。